【教頭通信】子どものつまずきに応じた教育①

【解説】令和2年1月11日記

もしかしたら今だに「ただただ多量にやらせる」ということが、子供の学力を伸ばすポイントだと考えている教師はいないだろう。もしいるとしたら、よほど勉強不足の教師であろう。

これを書いた当時は、「ただただ多量にやらせる」教師というのは、けっこういたように思う。

令和の時代になって、ITを活用して「個別最適化」ということが言われるようになってきたので、大きく教育は変わるチャンスを迎えている。

※初出 平成13年9月 教頭通信

■この10年近く、私がやってみたかったことの一つに次のことがある。

 各学級の漢字テストや計算テストの結果を公表し合う。

ということがある。

これは簡単そうで,非常に難しいことである.

必ず学校の誰かが反対する.正面切って反対しなくても,なんやかんやと難癖をつけてきて,できずじまいということが多い.

そういった意味で,現在飛仁帯が取り組んでいることには頭が下がる.

 

■結果を公表しあうということは,教師にとって大変辛いことである.

子どもの結果が悪い.

それは教師の指導が悪いということと、どうしても直結してしまうからである.

 

■NHK夜7時半の番組で、「読み・書き・算」に取り組む学校が紹介されたことがあった.

現在の「ゆとり教育」「自ら学ぶ教育」にあたかも異を唱える学校のように思われ,各界から様々な批判があったという.

反対に賛同する意見も多く寄せられ,それなりに反響が大きい番組となった.

 

■この夏にその学校で中心的な役割を果たしてきた教師の論文を読んだ.

山口県山口小学校の教師.

興味深い実践を報告している.

漢字力をアップさせることに取り組む.

学校として取り組むことにしたので,そのシステムを最初の年に作ることにした.

①2学期までにその学年で出てきた新しい漢字の勉強を終わらせる.

②3学期は,復習の学期にする.

③3月末に全校一斉に漢字のまとめのテストを行う.

こうした学校の取り組みを作って最初の結果が出る.

 

■漢字指導に絶対的な自信を持っている教師.

プリントに多くの時間をさき漢字指導に労力を割いている教師である.

かたや漢字指導に自信の無い教師.

全校の教師達は,当然この自信のある教師と自信のない教師の学級では,点数で大きな差が出ると考えていた.

ところがである。

100点にして,わずか5点の差しかなかったのである.

これには、教師達もびっくりした。

何故,このような結果になってしまったのか.

その結論は、漢字の力を向上させるにはただ時間をかければいいというものではない.

子どもには,放っておいても一人で覚えてしまう漢字もあれば,練習しても間違えてしまう漢字もあるということ。

そんなことが見えてきたという.

そこで、山口小学校では次の年から間違えやすい漢字などに焦点を絞り,漢字指導に当たったという.

その結果,徐々に効果が現れ漢字の学力も向上したのだという.

しかし、それでも全学級が平均点90点以上になるには6年間もの時間がかかったというのだから,漢字指導とは簡単そうで大変難しいということが分かる.

 

■この実践から教訓として学ぶことがある.

基礎学力をアップさせるために,一般的に信じられている「ともかく数多くやらせればよいのだ」という指導は,劇的な効果は無いのだということ.

私から言わせれば,「ともかく数多くやらせる指導」は子どもの生活時間を奪い,反対に勉強アレルギーを作り出す元になる。

教科書そっちのけで、プリントを多量に用意し,子どもたちに勉強させたところで、ほとんど効果は無い.

それより大事なことは,「子どものつまずきに対応した学習にする」ということである。

 

■しかし、この「子どものつまずきに対応した学習にする」というのが、なかなか厄介なのである.

簡単に見えて,非常に難しいのである.

例えば,現在教育改革でよく言われることに少人数学級にすれば子どもの学力は向上するというのがある.「40人学級」を「30人学級」にせよ、というわけである。

しかし、それ本当か.

ただ単純に子どもの数が少なくなりさえすれば学力が向上し,教育環境がよくなると信じ込んでいる.

「50人学級」が「45人学級」になり、そして「40人学級」になって、学力が向上したのかといったら,そんなこともない。反対に悪くなっているといった感じである.

アメリカで大々的な調査を行った.

それによれば劇的な変化が生じるのは,「20人学級以下」にした場合である。

それも教師に小規模に応じた指導方法の研修を義務付けてである.

要するに,教師の指導方法が変わらない限り、子どもの学力は向上しないし,子どもは救われないのである.

 

≪次号へ続く≫

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