【教頭通信】教科書の大切さを教育実習生から学んだ

【解説】平成30年11月27日記

人にレッテルを貼り「あの人は・・・だ」といって決めつける方を私は苦手です。人には思想信条の自由があります。どんな方からも学ぶことはあります。仮に自分より年の若い方であっても、学ぶことはあります。最初ちょっと苦手だなと思っていたとしても、その方のやることを見て、私自身が反省することも多いです。「ああ、あの方のここが素敵だな」「あの人からはここが学べるな」と思うのです。自分が成長していく上で、一面的に決めつけるという考え方は捨て去ることがとても大事なことなのだと思っています。今回の教頭通信は、教育実習生から学んだことについて書いています。

※初出 平成17年 教頭通信

◆担任時代のときのことです。教育実習生が来ました。私の学級に入りました。私は6年生担任です。教育実習生に私は聞きました。

「将来、先生になるつもりある?あるのだったら、私も頑張って教えるから。ないのだったら、そこそこに頑張ってね」等と偉そうに言ってしまいました。

「将来、絵の道に進んでみたいと思っています」

そんな答えが返ってきました。そこで、私も偉そうに言ったのですから、私が言ったとおり「そこそこに」教えればよかったのですが、内心「教職の魅力を少しでも伝えてあげたい」という思いで教えることにしました。

 

◆しばらくたって、何かの授業をしてもらうことにしました。私は算数がいいだろうと考え、一単元分授業をしてもらうことにしました。図形教材です。

 

◆教育実習生は、「青坂先生、どのように授業を進めたらいいでしょうか?」と聞いてきます。

「そうだね。教科書に従って進めてみるといいよ」

とアドバイスしました。当時は、「教科書通りに授業を進める」という考え方は、教育界にはありませんでしたから、大分異様な考え方でアドバイスしたことになります。また、「ノート指導も大切にしたらいいよ」とアドバイスしました。

 

◆教育実習生は女性です。彼女は、笑顔で、丁寧に授業を進めていきます。そして、教科書に従って、着実に進めます。そして、毎時間、教科書のその日の教えるところの図形をコピーして学級全員に配ります。それを子どもたちに鋏で切らせて、のりで丁寧にノートに貼らせます。

 

◆皆さんも想像付くように、子どもたちに鋏で切らせ、ノートに貼らせるとそれだけで結構時間をとります。私から見たら、まどろっこしいような感じがします。ぱっぱっとやらせるためには、切って、わざわざノートに貼らせなくてもいいような感じがするのです。しかし、子どもたちは楽しんで作業しているのです。子どもたちは、教育実習生の算数の授業が楽しいと言います。

「えっ、なぜ?」

と思いました。私のそれまでの教育観が揺らぎ始めました。教師から、あっというような問題を提出し、子どもたちが精一杯考え、問題解決していく、そんな授業を理想としながら、教えるべきときには教える、そんなスタンスの授業のあり方を考えていましたから、意外なことになっているのです。教育実習生より、私のほうが授業がうまいはずだ。それにも関わらず子どもたちは教育実習生の授業が楽しいと言う。そんなはずはない。それがいつわざる私の気持ちだったのです。

 

◆子どもたちと教育実習生の授業を私は表面的には笑顔で見て、内心穏やかでない日々を過ごしていました。心の中では、特に「きっと楽しいといっているけど、最後のテストではあまりいい成績か残せないのでは」等と疑いを持っていました。

 

◆授業が進んでいく中で、自分の手で切った教科書のコピーが貼られ、重要事項は赤鉛筆で囲まれた、丁寧なノート。きれいなノートが出来上がっていきます。子どもたちは、自分のノートを見て、にんまりしています。そして、テストの日がやってきました。

 

◆私の算数では、市販テストでは学級平均点85点前後が普通でした。ただし、一学期の初めは何とか90点を越えます。しかし、時間が経つと学級平均点90点を超えることはめったにありませんでした。ですから、「80点を超えれば、頑張った証拠だろう」等と思っていたのです。ところがなんと、テストの結果が出てみると、驚くべきものでした。

 学級平均点90点を大幅に超える。

というものでした。

 

◆私は大いに反省しました。教育実習生に私が教えるどころか、反対に教わる結果となったのです。どうして「学級平均点90点を大幅に超える」という結果になったのでしょうか。私は、この一件以来「教科書を大切にした授業」「ノート指導を重視すること」「手指を動かすような教育活動」こうした授業を重視するようになりました。

 

◆教育実習が三週間で終了しました。子どもたちと彼女の涙の別れがありました。その一年半後、彼女は教師になってこの根室管内に戻ってきました。しかし、事情があって、その後教職を去りました。それにしても私の教え方のターニングポイントになったことは間違いありませんでした。

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