【原稿】一人一人を大切にする

【解説】平成30年8月14日

文章力を鍛えたいとずっと思ってきました。自分の言いたいことがきちんと伝わる、時には心を打つような文章を書くことができる。そのために何かを意識し具体的な行動をしたのかと言ったらそんなに多くはありません。

「2000字原稿」A4、1枚に2000字で文章を書く。長くは続かなかったのですが、そんなことを自らに課したこともありました。今回紹介するのはその中の1枚です。

子ども一人一人を大切にするということに関して、私の長年の主張は、ごくごくささやかな日常の中にこそある、というものです。それについて書いています。

※執筆 平成14年

子どもを大切にする.というのは、口で言うのは簡単だが、実際にできるかといったらそんなに簡単なことではない.「一人一人を大切にしなさい」「子どもを受け入れてあげなさい」と言っている人に限って、なかなか出来ていない.というより反対に子どもを否定していることのほうが多いくらいである.

子どもは、誰からも認められたいと願っている.自分の存在を肯定されていたいのである.これはごく自然なことだし、人として存在する意義も他から認められるということにある.

学校においては、間違い無く子どもたちは教師から認められたいと願っている.教師も一人一人の子どもたちを大切にし、認めたいと考えている.確かにある子が良いことをしたときには、学級の中で拍手してあげて賞賛するということもある.また学級通信などに書いて認めてあげたり、ミニ賞状を作成し子どもに渡すこともある.

私は、昔からそうした誰もがやる工夫というもの以上に、教師の日常のあり方そのもののほうにこそポイントがあるのだと考えてきた.もちろん、賞状を渡したり、拍手してあげたり、学級通信に書いてあげることも時には必要だろう.しかし、それには限界があるのだということを教師は考えておかねばならない.一人残らず1年間のうちに表舞台に立たせることができるのならいい.しかし、現実はそうはならない。誰か特定の子ばかりが賞賛されるという表舞台に立ちがちなのである.

ごくごくささやかな日常の中で子ども一人一人を認めるという教師の行為は、どんなことがあるだろうか.子どもが、自分は学校では学級ではスターなのだというように感じられること.それを現実のものとする教師の行為である.

子どもが廊下を歩いてくる.教師と視線が合う.教師はみな笑顔で「おはよう」といった挨拶をかけてきてくれる.

子どもが教師に何かを尋ねる.教師は仕事をしている.しかし、教師は仕事の手を休めて質問に答えてくれる.または話を聞いてくれる.

子どもがおなかに手を当てて痛そうにする.担任以外の教師であっても「どうしたの。大丈夫」と声をかけてくれる.

こうした教師の何気ない行為は、子どもの「認められたい」という気持ちを充たし、学校や教師への好感度を高めてくれるであろう.学校に行くのが楽しい、学校が大好きというような感情を呼び覚ましてくれるに違いない.

こうした行為に徹底的にこだわっているのが東京ディズニーランドである。東京ディズニーランドでは、従業員はキャストと呼ばれている.キャストは、お客であるゲストに対して最大限の気配りをする.それはカストーディアルと呼ばれている清掃担当者にまで徹底されている.

ゲストに対するキャストの気配りは、マニュアル以上のものを持ち得ている.例えば笑顔である.笑顔が大切であるということは、どの職種でも重要視されるものであろう.ファーストフードのお店に行けば、どこでも従業員は笑顔で対応してくれる.

しかし、東京ディズニーランドでは、何故笑顔が大切なのかをその趣旨を説明されるという.「こういう笑顔を相手にしたら、どんな気持ちがするだろうか.そして、あなたとゲストのコミュニケーションのきっかけに心からの笑顔がどれぐらい大切か。自分が逆になったときを想像してみましょう」『ディズニーランド流心理学』(知的生きかた文庫)このように説明されるのだという.

お客であるゲスト一人一人を認めること。それには並々ならぬ従業員であるキャストの努力から生み出されるゲストに対する認めるという具体的な行為が存在している.それが例えば、視線があったら笑顔で「こんにちは」と言ったり、作業中であってもゲストから声をかけられたら、誠実に対応するということであったりする.そうした行為があるからこそ(もちろん他にも要因はあるが)、再びディズニーランドを訪れると言うリピーター率が97.5%を越えるのである.この数字は脅威的である.

 

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