【教頭通信】誰でもわかる法律講座
【解説】令和2年5月20日記
新型コロナウイルス感染症による臨時休業。感染症による臨時休業も法律によって決まっている。総理大臣といえども、それを犯すことはできない。すべての日本人が法律という枠組みの中でしか、動くことはできない仕組みになっているのである。
学校の教員も、法律についてある程度のことは知っておく必要がある。ともすれば、自分の思い込みだけで判断しがちなところがあるが、必ず物事には根拠となるべき法律が存在していることが多いものだ。そして、その法律も時代とともに変わっていく。
これを書いたとき、北海道の公務員の勤務時間は8時間だったが、その後、7時間45分に変更になっている。
※初出 平成13年 教頭通信
■高校時代、私がなりたかった職業は色々あるのですが、大学受験を目の前にしたとき私が志したのは法学部法律学科でした。法律に対して私は非常に興味があったのです。日本は法治国家です。法治国家だということを意識する、しないに関わらず、私達は多くの法律に守られていたり、法律に従って生活していかなければならないということです。私は小学生のときから算数は好きでしたから、なにかきちんと答えの出るもの、論理的に考えられるものが好きだったのです。そうしたことから、私は法律を志したのです。私は、法学部法律学科のある私立大学をたくさん受けました。しかし、残念ながらそのほとんどを受験に失敗しました。私はたくさん受験した中で唯一合格していた教育学部に入ることになりました。その後、教師になってからも法律には興味がありましたが、特別勉強したこともありませんでした。その必要も感じなかったのです。
■教務部長を3年間と管理職になってから、法律について大変意識するようになりました。その中で感じてきたことは、一般の先生方はあまりにも法律に対して無知であるということです。もちろん、私も若いときには法律を意識することがなくても教師をやってこれたわけですから、他の先生方を非難する気はまったくありませんし、知らなくても当たり前だなとも思います。しかし、多少なりとも法律のことについて知っていれば、どのように行動したらよいのか迷ったときや、何か自分に不利益が生じたときに守ってくれる力となってくれるはずです。
■この通信に私なりに理解していることについて書いていくつもりです。ちょっと堅い話もあると思います。読みづらかったら読み飛ばしてください。
■私たち教師には勤務時間というものがあります。さて、そこで問題です。その勤務時間は誰が定めているのでしょうか。おわかりですか。
戦前、教師は「聖職」とみなされてきました。聖職者には、勤務時間という概念はありませんでした。「教師は聖職者なのだから、休みだろうと夜だろうと、教育のために全力を尽くすべきだ」という考えです。しかし、戦後その考え方は否定され、教師も一般の地方公務員と同じように扱われるようになりました。つまり、一定の給料を受けるために一定の勤務を時間として提供するということです。ですから、原則的に労働基準法に従うということになります。つまり勤務時間というのは、一定の給料によって保証されたものということになるわけです。
■国民の税金である給料をきちんと時間として提供しているのか、それを管理するという意味において管理職は存在します。労働基準法第32条では、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について40時間を越えて、労働させてはならない」とし、同法第二項では、「使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を越えて、労働させてはならない」としています。この条文が地方公務員である教師にも適用されます。しかしその一方で、地方公務員の勤務時間は、労働基準法に抵触しない範囲において条例で定めることになっています。
■しかし、労働基準法や条例においても、一週間や休憩時間の与え方など、大枠しか規定していません。何時から何時まで勤務すべきなのかはわかりません。例えば、職種によっては、夜勤務したほうがいいとか、朝方に勤務したほうがいいとか変わってきます。それぞれの勤務時間を誰かが決定しなければならなくなります。つまり具体的に勤務時間を決定することを「勤務時間の割り振り」と呼びます。
■「勤務時間の割り振り」は、教職員を監督する立場にある教育委員会がしなければなりません。しかし、各学校に応じてそれぞれの抱えている事情には違いが生じますから、各学校長に教育委員会は委任し、決定させているということになります。
■それでは、「勤務時間を割り振り」を具体的に決定する手順とはどうなっているでしょうか。まず第一にすることは、年間の中で「勤務を要する日」と「勤務を要しない日」を決定することです。勤務を要しない日には、日曜日・土曜日、国民の祝日、年末年始休暇、そして開校記念日ということになります。
次にすることは、勤務日における勤務時間を定めます。これは新年度からは特別な事情がない限り1日八時間となります。
3番目にすることは、勤務時間の始まりと終わりを定めます。飛仁帯で言えば、午前7時45分から午後4時30分までとなります。「あれ、8時間45分も勤務することになるぞ」と疑問に思う方がいるでしょうね。実を言うとこの中には、休憩時間の45分が含まれているのです。休憩時間は勤務時間には入らないのです。「それだったら、45分前の3時45分で勤務時間終了にすればいいのではないか」ところが休憩時間は勤務の途中におかなければならないことになっているのです。そこで4番目にすること、それは勤務日における休憩時間や休息時間を配置することなのです。『学校経営計画』誌に「勤務時間の割り振り」が載っていますので確認してみてください。