【月別経営の重点】1月。次年度を見据えつつ学校教育の不足な点を焦点化し取り組みを推進していく

【解説】令和4年9月3日記

校長は、独りよがりになるのではなく俯瞰的な立場・客観的な立場を堅持しつつ、そこに教育者としての考えを学校教育の中に取り込んでいくことが大事だと考えてきました。

そのために、日頃の学校や生徒の実態把握とデータに基づく分析と考察をメインにしつつも、それまで教師として培ってきた経験や勘といったものを加味していくことでよりよい学校経営ができるものだと信じています。

この文書は1月に書かれたものですが、それまでの職員の真摯な取り組みに感謝しつつも、三学期以降そして次年度を見据えた取り組みの重点ともいうべきことを考え、それを学校評価で得られたデータをもとに伝えようとしていました。

※学校評価等の結果をグラフ化し掲載していますが、ここではデータのグラフについては省略しています。

 ※初出 平成30年1月

前回、私から全職員に説明したことは次のことである。

1 こどもを成長させるキーワードは「やる気」と「努力」である

2 「努力型の学校」にすることが全ての生徒を伸ばすことにつながる

3 保護者アンケート・「心の問題」に対応することが求められている

私たちは、生徒の心の問題に手をこまねいていたわけではない。真摯に対応している。しかし、そのことが親には伝わっていない。ある意味不信感を持たれている。これは決して見過ごすことのできない課題である。私たちの取組を目に見える形で行っていくことが必要である。取組の見える化である。

 

1 授業・学習アンケート、7月末とほぼ変わらず

研修部の取組の一つである授業・学習アンケート。二学期末に多くの方が取り組んでいる。時間的な余裕がなく未実施の方もいるようだが、とりあえず私の方で集計し、分析してみることにした。

今回は、一学期末に実施したことと比較して示すことにする。

まずは、今年度の重点にかかわる「規律」と「能動性」に関する学習自己評価である。規律面の「そう思う」と「ややそう思う」、7月末では93.2%、12月末では93.3%なのでほぼ変わらずである。

能動性で言えば、91.6%から92.4%なので、これも変わらずといったところだろう。

これをよしとするか、それとも改善すべきとするかは、各教科担当に考えてもらうことになるだろう。学校としては、どちらも高水準にあると判断したい。

次に教師の授業力について生徒はどのように評価しているのか。前回と同じように「教師の授業の基本」と「教師の授業の展開力・構成力」という観点で各項目を分類し、7月末と比較してみた。

大まかに結論を述べると、ほぼこれも変わっていないか、若干下がった(悪くなった)項目があるということである。教師の説明はわかりやすく、授業の進め方もちょうど良いと思っている。しかし、結果として授業内容がよくわかったかというと7月末より下がった、ということがみてとれる。その原因は、各教科・各教師によって違いはあると思われるので、各自が十分検討してほしい。

2 学校評価 「心の問題」への対応

次に、学校評価から今後の課題を把握しておこう。最初に生徒自身は今年度をどのように評価したか。それについて、過去3年間の年度推移で、下降した(悪化している)項目は何かあったかから考えてみることにする。

全体としては、改善している。「平均」が3年間わずかながら上昇している。全部で15項目あるのだが、11項目が改善傾向である。しかしながら、4項目が悪化している。ワースト4項目について、今後改善すべきだろう。

そのワースト4項目は次の通り。

①家庭学習に意欲的に取り組んでいる。

②時間を守って生活している。

③よさや個性を生かしながら温かい学級がつくられている。

④いじめ予防や早目の発見に努め、いじめが発生した時は一生懸命対応している。

ここでも「心の問題」が垣間見える。「心の問題」は、抽象的だが、実際に私たちが指導するときには「言動の問題」にいかに適切に対応するのかが問われることになる。「心の問題」は、教師がいくら言葉だけで「しっかりやれ!」と叱咤したところで変わるものではない。何気ない生徒の言動を変えていくことで生徒の心も変わっていくのである。

 

4 保護者と生徒のギャップ

今年度の保護者結果と生徒結果を比較してみた。ここでは、保護者がわが子もしくは他の保護者等から聞いて感じている結果と生徒自身が思っていることの結果を比較してみることで、より学校評価の分析観点を多面的にしようとするものである。特に、保護者と生徒でギャップのある項目、ここには何らかの問題点が隠されていることが多いのが通例である。

保護者と生徒で0.5ポイント以上の大きなギャップがあったのは、全15項目中4項目である。その一番のワーストがいじめへの対応である。保護者は学校・教師は適切に対応していないと思っているが、生徒はそれほど感じていないということである。

これはいじめの問題がプライバシーの問題もあってなかなか公開できないという側面があるために、個人には見えない形で情報だけが独り歩きしてしまうということが要因としては考えられる。

事情をしっかり理解していなくても、「いじめがあった」とか、ある一人の側だけの話をさも真実であるかのごときものとして信じ込んでしまうということがあるものだ。

これについてなかなか対応法というものはないものだが、ともかくいじめ的な言動については、「早期発見・早期対応」ということに尽きるのではないかと思う。担任だけでなく全職員が、いじめ的言動については、怒鳴るのではなく毅然と対応することが求められる。

次にギャップのあった項目は、「家庭学習に意欲的に取り組んでいる」である。保護者は、生徒たちは意欲的に取り組んでいると思っているが、生徒自身は案外そうではない。やはりいやいや取り組んでいるという側面があるようだ。わが子の心の中は、保護者でもわからないといったところだろうか。

家庭学習の次にギャップのあったのが、道徳や悩みへの対応等についてであった。生徒たちの方が、好意的にとらえ、保護者は不信を持っているということであった。

これらのことについて、私たち教師側は真摯にとらえて今後きちんと対応していく必要がある。学校内であったこと、教室内であったことは、プライバシー・個人情報に配慮しつつも、できるだけ公開し保護者に伝えていくことである。

せっかく頑張って取り組んでも保護者に伝わらず逆に不信感をかうということは極めて残念なことである。それは避けなければならない。保護者に不信をかってよかったことなぞ今まで一度たりともない。

 

4 学力保証のポイント

いよいよ今年度も残すところ三学期のみとなった。三学期はあっという間に過ぎる。三学期は、まとめと別れの季節でもあるが、新年度4月に向けての準備時期である。この新年度の動きを見越して、日々の実践を積み上げていく必要がある。

例えば授業。今年度の教科書はとりあえず終わった、とばかりに手を抜くことがあってはならない。教科書を終わらせることは最低限すべきこと。そのうえで、一人一人の生徒にきちんと学力が身についたのか、点検しておくこと。点検して、学力が身についていないようであれば、それを保証するための取組を進めてほしい。

私の若いときの失敗。教科書は12月から1月末までに終了させるようにしていた。そして、その学年の残った時間はお楽しみ会的なことに時間を費やすことが多かった。子供も喜んだし、私も1年の最後ということで、ある程度自由であることは必要だと思っていた。しかし学力は悲惨なものとなる。特に次の学年に渡して新しい担任が前学年のテストをしてみると、きちんと身についていないことが明らかになるのである。

 

学力保証は時間を確保することである。部活でも同じである。ある程度の時間をきちんと確保しなければ強くなることはありえない。授業、50分を45分にしただけで、学力は落ちると思っていた方がいい。もちろんできる生徒は大丈夫なことが多い。しかし、できない生徒にとってわずか5分のことが命取りになる。

そして、学力保証は密度である。50分の中で一問しか解かない授業と二十問解く授業。どちらが力が付くかはっきりしている。部活で言えば、コーチの説明ばかりに時間を取られ、選手が体を動かす時間が少なくなればなるほど、選手は飽き飽きするし、力もつかないものである。一単位時間の密度を濃くすること。

そのためには、授業にリズムとテンポが必要になる。メリハリを利かせ、テンポをアップするのである。もちろん、説明や解説をしてあげることは必要である。そうであったとしても、できるだけ説明・解説を短くし、生徒が活動するべき時間を増やすことが、授業の密度を上げることにつながるのである。

そして、学力保証は繰り返し・反復である。繰り返しのない学習内容は定着しない。どんな芸事でも基礎練習の反復がある。それこそ、その基礎練習だけを毎日毎日しているものがあるくらいである。どんなことでも、基礎を大切にし、繰り返し、繰り返し取り組んでいると知らず知らずのうちに力が付いてくる。それを学習者側も実感する。

また、基礎練習の繰り返しの途中で、「なぜ、この練習が必要なのか」などを語ることも必要だし、生徒自身に考えさせることも必要となる。自ら考え納得し、取り組むことはよりレベルをアップさせていくことにつながるのである。

 

※年度末になります。「終わりよければすべてよし」です。健康面には十分留意して生徒たちの指導等によろしくお願いいたします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です