【学校便り】地域とともにある学校
【解説】令和元年7月11日記
学校は、校長のものでも一教師のものでもありません。学校の設置者はその自治体の首長であり、その首長を選挙という民主的な仕組みの下で選んでいる住民がその最終的な責任者ということになります。学校は地域の中に存在しています。学校は、その地域にとって「心のふるさと」と呼べるようなものであります。学校と地域は切っても切れない関係です。ところが、少子化の波で学校の統廃合が進んでいます。お金の面で言えば、仕方のないこともあります。しかし、本当にそれだけのことで統廃合を進めていいのだろうか、という思いが私の中にあります。学校が地域から無くなることによって、地域の衰退が急速に進んだという話を聞くこともあるからです。
学校が存続している限りにおいて、学校は地域とともにあるべき。そして、地域に向けて文化的な発信をすべきだと私は考えてきました。学校づくりは地域づくりにつながらなければ、その教育は本物ではないとも思ってきました。
※初出 平成26年度学校便り5月号
◆昨年、中学3年の生徒たちが、総合的な学習の時間に酪農の学習をしました。酪農地帯に住みながら、あまり酪農や地域のことを知らないのではないか。もっと地域を愛し、地域に誇りを持てる生徒であってほしい。そんな願いから、地域の基幹産業である酪農のことを、より深く学ぼうということで実施しました。その学習の中で、地域の方に講師になっていただき、お話をしていただきました。私も、参観させてお話を聞きましたが大変興味深いことばかりでした。この地域に住みながら、この地域のこと、特に歴史的なことを知らないなと痛感しました。
◆そこで、もっと深く知りたいと考え校長室の書棚を漁りました。地域の歴史を知ることができる書籍・資料がないかと探したのです。すると、一冊の茶色になった古ぼけた冊子がありました。『別海町、中標津町の地名研究』発行者は「樽前自然教育研究所」というところです。昭和61年に発行され、非売品となっていますから、ほとんどの方は見たことがないと思われます。
◆「西春別」についての記述もあります。その中の一節に次のように書いてあります。
「この地区の開発は戦争遂行の歴史と深く関わっており、それは現在にまで至っているのである。即ち、陸軍軍馬補充部の設置と計根別第4飛行場の建設である。このため開拓入植者或いは市街地入植者が再三にわたって立ち退き移転を命じられるという数奇な運命をたどることになったのである」
◆駅前地区の発展について、次のように書いてあります。ほんの一部ですが紹介します。
「戦争中は、軍馬補充部の設置による西春別市街の発展に較べれば遅滞した成長であったが、戦後になって、原野への入植が急増するに伴って、別海村西部地区開拓の拠点として著しい発展を遂げ、別海市街(旧西別)に次ぐ別海第二の市街地となったのである」
◆「戦争遂行の歴史」「西春別における旧市街と駅前との関係」など、私自身深くわからなかったことが、『別海町、中標津町の地名研究』の冊子から読み取れます。
◆地域の歴史を知れば知るほど、その地域に愛着がわきます。歴史と言ってしまえば、何か難しいことのように感じます。しかし、この地域に住む父さん、母さん、じいちゃん、ばあちゃんたちがどのように生きてきたのか、その生き方の裏側にはどのような思いや願いを抱いて生きてきたのかを知ることが、歴史を知る第一歩だと思います。
◆校舎が新しくなります。全面改築です。今年度、設計し、平成27年度、28年度の二ヵ年をかけて校舎を新しくします。そして、29年度には体育館も新しくします。そして、30年度、外溝工事に着手します。つまり、これから五ヵ年をかけて上西春別中学校が生まれ変わるのです。
◆その際、どのような校舎にするのか。それを考えることは、とても大切なことです。10年後、20年後を考えるだけでなく、50年、100年後を考えた校舎、学校づくりが求められます。その一番のキーポイント、それは「地域とともにある学校」「地域に根ざす学校」ということだと私は考えています。
◆もちろん、校舎を建てるということは、別海町が町として考え構想していくことですから、一校長である私が言うべきことではないかもしれません。しかし、「地域とともにある学校」という考え方をきっとどなたも否定されないでしょうし、この地域の多くの方々から賛同していただける考え方であると私は確信しています。また、そうでなければ、ただ単なるハコモノとしてだけの「校舎改築」ということになってしまい、「まちづくり」「人づくり」に寄与できるものとはならないのではないかとも思っています。
◆今後、生徒たちや保護者、地域の皆様方にも、具体的にどのような校舎、施設であればよいのかをお聞きし、少しでも新校舎造りに反映できるようにしていく予定です。校舎改築が、この地域の歴史に新たなページを切り開く契機になればいいなと思います。「地域とともにある学校」それは過去から未来につなぐ上西春別中学校の姿でもあります。