【教頭通信】私の漢字指導の一場面

【解説】平成30年11月20日記

先生も休むことはあります。休んだ先生のカバーに、他の先生が学級や授業に代わりに入ることを「補教」だとか「補欠」といったりします。補教に入る先生は担任をしていないフリーの先生や管理職の先生が多いです。この当時私は教頭でしたので、ときおり補教に入ることがありました。ここに書かれてあるのは、私が補教として入った学級での漢字指導の場面ですが、それなりに指導のポイントは押さえていたと思います。

※初出 平成17年 教頭通信

◆担任を離れて、9年になります。39歳のとき、担任最後となりました。ですから、授業の腕は完全に鈍っています。研究協議などでは偉そうに話すことが多いのですが、子どもの体温を感じて指導する場面では、微妙な点がいい加減になっていることが多いと思います。

 

◆今日は、3年2組K先生の学級に補教に入りました。1時間目の国語でした。やる内容は、「漢字スキル」と「本読みテスト」です。朝の会はT先生。T先生から「朝の会終了しました」ということで、教室に向かいました。3年2組の教室の戸を開けて、教室に入ります。入った瞬間に教室全体の雰囲気を感じます。全体の様子を目に焼き付けようとします。しかし、こうやって思い出して書こうとすると、教室の前の方のしか思い出せません。要するに全体の状況が捉えられていないのだと思います。

 

◆子どもたちの前に立って、もうほとんどの子達は漢字スキルが出ていました。しかし、出していない子もいたので、「漢字スキルを出します」と言いました。「今日、やるところは?」と聞くと、「9番目」と言います。どのように進めたらよいのかわからなかったので、「いつもどおりやってごらん」と言うと、「K先生、一つ一つ読んでいたよ」と言います。そこで、基本に戻ってやることにしました。

 

◆漢字スキルの指導におけるポイント、というより確実に定着させるポイントは、

「確認」と「反復」

に尽きます。確認とは、一人ひとりがきちんとできているのかを教師が見取ることです。例えば、この授業の漢字スキルでは最初に「面」という漢字が出てきます。

私は、子どもたちに次のように言いました。

「面という漢字に指を置きなさい」

子どもたちは指を置きます。しかし、何人かは指を置いていません。そこで、「まだ指を置いていない子がいます」と言います。あわてて指を置きます。さて、私はここで指を置かせた理由。それは授業の最初は、絶対に子どもを落ちこぼしてはならない、という考えに基づいています。この後、私がしたいことは、漢字の読み仮名を全て読ませる、ということです。この場合、子どもの中ではどこを読んでいるのかわからなくて、ついて来れない子が、何人かは出ます。それが普通です。そして、読んでいない子を見つけると、教師が怒るということになりがちです。ですから、それを未然に防ぐためにも、「指を置きなさい」と指示したのです。これは具体的な行動ですから、教師からしたら、子どもの様子を見るだけで確認できます。

 

◆子どもたちと声を合わせながら、「メン、スイメン、ヒョウメン、ジメン、メンダン、・・・」と読んでいきます。私は、振り仮名を読みながら子どもたちの中で読まない子がいないかを確認します。確認ですから、一人ひとりがきちんとしているかを見取る必要があります。ところが完全に見とれません。しかし、読んでいない子が、何となく居ることは感じられます。それは「声の質」「体の微妙な動き」からです。そこで「もう一度」と言いました。ただし、全体を反復させたのではなく、ある一つの漢字の読み方だけです。もっと「読み方を徹底すべきだ」と思う方がいるかもしれませんが、この漢字スキルで大切なことは、「書き」です。「読み」の指導を重視すると、時間が足りなくなります。「読み」は、さらっと進めます。しかし、さらっと進めるということであっても、子どもたちの集中度は、どうしても確認し、それに対して何らかの手立ては講じる必要はあるでしょう。

 

◆次は「指書き」です。漢字スキル最大のポイントです。ここをきちんと指導できないと、漢字は書けるようになりません。特に低位の子どもたちにとってのポイントなるところです。徹底した「確認」と「反復」が必要になるということです。

「面、指書きしてごらん」

「何回やるんですか?」

「先生が、止めと言うまで」

学級の中で、何人かが「いーち、に、さーん・・・」と声を出しています。そこですかさず「そうだ。声を出すんだね」と褒めます。声を出すことで、集中度、定着度を増すことができます。先ほどより、声を出す子が多くなりました。私は、机間巡視をしながら、子どもたちが指書きしているかを見て回ります。机から指を離している子達が結構います。机に指が触れて「指書き」した方が、定着度は増します。離れて「指書き」すると、どうしてもいい加減になりやすいのです。指導を徹底しようかなと思いましたが、「音読テスト」をしなければならないので、私の指導も中途半端に終わってしまいました。

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