【学校便り】感動的な歌声を引き出したもの
【解説】令和5年1月25日記
スポーツや芸術におけるイベントで感動的なシーンが生まれたりします。
当然それは、選手や演者の心を込めたパフォーマンスによるところが大きいのですが、そればかりではありません。
観客の方々の声援や応援が、選手や演者に届いて一体となって作り出されるのではないかと思います。
試合終了後に
「皆さんの応援が力になりました!」
という選手たちの言葉がそれを表しています。
子供たちでも同じです。
中学校になると、体育祭や参観日には保護者はあまり来なくなると言いますが、私の勤務していた学校では幸いなことにそんなことはありませんでした。
※初出 平成28年11月7日
◆プロ野球日本シリーズは、北海道日本ハムファイターズの優勝で終了しました。2連敗した時には、日本ハムは勝てないのではないかと思ってしまいました。しかしながら、その後札幌ドームで3連勝。そして、相手チーム広島カープの本拠地に乗り込んで、勝ちをおさめての日本一でした。野球の楽しさを再認識させてくれた日本シリーズでした。
◆広島での最終戦。私が心ひかれた場面はいくつかありました。それらの中で一番心惹かれた場面があります。それは日本ハムが優勝を決めて栗山監督がインタビューを受ける場面です。広島球場は広島カープのファンだらけ。広島ファンは、負けてきっと悔しい思いをしていたはずです。憎き栗山監督に恨み言の一つも言いたいはずです。罵声を浴びせかけたい気持ちもあったはずです。優勝監督のインタビュー場面なんて見たくないはずです。そうした広島ファンにとって悔しい場面で、広島ファンは静かに栗山監督の話を聞き、時には拍手を送っていました。すばらしいなと思いました。このようなファンの存在が、球史に残るような名試合を生んだのだと思いました。
◆学校祭が終了しました。生徒たちの頑張りで素晴らしい学校祭になりました。特に、合唱コンクールではどの学年、どの学級も当日に向けてしっかりと取り組み、練習以上に素晴らしい歌声になっていました。私は、審査員として体育館中程の右側にいました。生徒たちの歌声をしっかり聞くためには体育館中央がいいとは思いましたが、専門的な歌声等については他の審査員にお任せして、私はステージに上がらない時の生徒の様子や生徒たちの雰囲気を感じ取りたいと思ったのです。
◆ステージ上の生徒たちの真剣に、そして一生懸命に歌う姿を見ながら、ふと「あれっ」と私は不思議に思いました。私の座っている席の後ろには300名を超えるお客様がいるはずだ。それにも関わらず物音ひとつしない。何かの間違いなのか。誰もいないのではないか。と一瞬不安になり、後ろを振り向きました。すると、体育館後ろ半分は300名を超える観客の皆さんで一杯です。ビデオや写真を撮っている方々もいますが、ほとんどの皆さんはステージ上の生徒たちを見ています。歌声に聴き入っています。それこそ会場全体がステージ上での生徒たちの合唱に集中し物音一つありません。合唱が終わると、大きな拍手。生徒たちもまた自分たちの歌声を作り出し発表することに集中し、歌声だけが会場を支配していました。
◆素晴らしい歌声は、日常の生徒たちの頑張りがあってのことです。しかし、当日の会場全体を包み込んだ感動は、観客の皆様方のマナーを守った鑑賞態度や生徒たちを心から応援しようとする気持ちによっても生まれたのではないかと思います。生徒たちの最高のパフォーマンスを引き出すのは、本人たちだけでなく、応援してくれる「よき家族」「よき地域」があってのことだと痛感いたしました。深謝。