【学校便り】高く跳ぶためには・・・

【解説】令和5年3月29日記

高く跳ぶために深く膝を曲げるというのは、異論のあるところかもしれません。

この学校便りで私の伝えたかったことは、何事にも目標を達成するためには、準備が必要だということです。

ともすれば目標を達成するためには直線的に考えがちになりますが、目標を見据えつつ、何を準備しなければならないのか、また一見無意味と思えることでも必要なことがあるということです。

特に、年を取ってくると人生に無意味なことはなかったなと思います。

一つ一つが人生の肥やしになっていたのだと思います。

※初出 平成29年10月1日

◆中学、高校生の時、体力テストの中に垂直跳びというのがありました。体育館の壁際にある目盛のついた小黒板に横向きに立って手を伸ばし、ジャンプして、小黒板にチョークで印をつけ、どれだけジャンプできたかを測ります。私は、それほど身長は高くなかったのでしたが、バレー部に入っていて、この垂直跳びの結果は結構気になるものでした。やはりバレーをするためには身長のハンディをカバーするために、ジャンプ力は必要とされたからです。

 

◆「青、ジャンプするときにはコツがあるんだ」と、ある時先輩から言われました。

「そのコツって何なんですか?」

と私は訊きました。

「それは、膝だろう。ジャンプするとき、きちんと膝を曲げて跳ぶんだよ」

今から思えばなんてことはないアドバイスです。しかし、その言葉を聞いた時、何とも新鮮に聞こえたものです。

 

◆私は高く跳びことだけを考え、小黒板の横に立つと、上の方ばかり見ていました。膝を気にすることなんてありませんでした。しかし、先輩は高く跳ぶためには膝を曲げることが必要なんだというわけです。高く跳ぶ。そのためにはいったん沈み込むという行為が必要になります。跳ぶ行為とは逆の動き方をしなければならないのです。沈み込むことによって、ジャンプするエネルギーを体全体にため込むのです。

 

◆「高く跳ぶためには、深く膝を曲げなければならない」

このことは生きていく上でとっても大切な教訓を含んでいるように思われます。有意義な、価値ある人生を送るためには、「目的・目標が必要だ」とか「人生のビジョンが必要だ」とよく言われたりします。垂直跳びで言えば、上を向いて、今までより高く跳ぼうという「目標」です。しかし、それだけでは「目標」を達成することはできません。その「目標」を達成するためには、膝を深く曲げるという具体的な行為が必要となります。

 

◆人生というステージで考えれば、目標達成のために、楽しいことも、苦しいことも、悲しいことも、うれしいこともすべて含めて様々な体験を積み、人や本などから知識を得、その知識を知恵にまで高め、それらの知恵を蓄えていくという下積みの時代が必要になります。人生の下積みの時代は、その時に味わっている者にとって、とても厳しく、辛いものと感じます。できれば逃げ出したい、できれば体験したくないと「逃げの気持ち」になってしまうこともあります。しかしそれらは、これから「高く跳ぶ」ために必要なことなのです。あらゆることが「人生の肥やし」なのです。

 

◆人生の思春期にあたる中学生期。勉強することの意義を問い直し、人とのつきあい方を人とぶつかり合ったり助け合ったりすることで学ぶ。時には、自分の容姿に悩み、人に恋することの切なさを味わい、父親や母親にちょっとしたことで妙に反発・反抗したくなったりする。そんな時期です。それは、これから「高く跳ぶ」ために準備している期間、膝を深く曲げている期間なのかもしれません。

 

◆10月は平成29年度の折り返し、年度の後半に突入です。三年生にとっては進路選択というとっても大切な時期となります。二年生は、この中央中の顔となって中央中全体をリードしていく立場となります。そして、一年生は中学生としての自覚が問われる時期となります。どんな立場であろうと、「高く跳ぶ」ためには必ず深く膝を曲げる時期が必要だということを、心の片隅に置いといてほしいなと思います。

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