【教務通信】子どもに力をつけるためには「点検」が不可欠です。

【解説】平成30年8月31日記

マネジメントサイクルによる学校改善・授業改善は、今では常識になりつつあります。しかし、この教務通信を執筆した当時の平成9年頃は、「一体なにそれ?」という感じでした。

また、今は「PDCA」と言っていますが、当時は「PDS」と言っていました。Cの点検・Aの実践がひとくくりでSの評価となっていたのです。

私は、このSでは不十分だと考えていました。そのことについて述べたのが、今回紹介する教務通信ということになります。

※初出 平成9年 教務通信

子供に力をつけるとは その1

■校長先生から、今年度の重点が示された。

  学級経営と学習指導の充実

 ということである。
このことをどのように現実の教室で実現していくのかということが、それぞれの教師に求められることになる。

■教師をそれなりに長くやってくると、それなりのコツというのが大体わかるようになる。
子どもに力を付けていくためのコツは、次のことである。

  計画(プラン)ー実行(ドゥー)ー評価(シー)

 このサイクルで実践すれば、子どもに力が付いていく。
このことは、初任者研修でも学んだことであり、ごくごく常識的なこととして、私なりには理解していたつもりであった。
しかし、理解しているからと言って、その通りに実践できるかといったらそうではない。
「わかっちゃいるけど・・・」というやつである。
そのことを真に理解し、実践できるまでにそれなりの時間が必要であった。
特に、このサイクルの中で理解しなければならないことは、「評価」のところなのである。

■現在の私が私なりに理解しているのは、子どもに力を付けるとき、「評価」という言葉で言っていても、実践には結び付きにくいということである。
「評価」という言葉は、美しい言葉である。
しかし、この「評価」という言葉を「点検」という言葉に置き換えてみよう。
そうすると、教師のやるべきことが見えてくる。
例えば、「山」という漢字を子どもたちに教える。
教師は、どのように教えたらよいのか、どのようにしたら効果的なのかということで教える計画を立てる。 漢字の成り立ちから教えようとか、筆順を徹底的に教えようとか、漢字ゲームをやらせる中で教えようとか考えるわけである。
そして、その計画を教室で実行する。
ここまでは、素人でもできるのである。
問題なのは、この後なのである。

■やったことが、一人ひとりの子どもに定着したかどうかを看取らなければならないのである。
この「看取り」を教育の世界では、「評価」とよんでいる。
しかし、「評価」とよんでいると、結局何をどうしていいのかがわからない。
この言葉を「点検」とよんでみよう。そうすると、「評価」という言葉より、何をどうしたらいいのかが見えてくる。
「点検」という言葉は、管理的な響きがある。だから、たいていの方は使いたがらない。
しかし、「点検」も「評価」も似たことを指し示しているのである。
辞書には、点検ということについて次のように書いてある。
「誤りや不備な点、故障がなどがないかどうか、一つ一つ調べること」

■これを授業という場に当てはめてみよう。
「子どもにつまずいている点や間違っている点、できないでいることなどがないかどうか、一人ひとり調べること」
これが、授業という場における「点検」ということである。
そうすると一人ひとりできているかどうかを顕在化させることになるわけであるから、これは子どもからしたら、なかなか厳しいということになる。
時には、教師は子どもから嫌われることも覚悟の上で「点検」をしなければならないのである。
そうすると、子どもから嫌われることを恐れる先生には「点検」ということができなくなってしまう。
つまり、「子どもから好かれよう好かれよう」という意識の強い教師には、子どもに力を付けれない恐れが出てくるわけである。
子どもに力を付けるということは、「好き嫌い」の世界ではない。
そうした単純な感情を乗り越えた世界にこそ、教師の仕事の醍醐味は存在しているのである。【次号に続く】

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