【教務通信】初歩的な教育技術ですが、極めて効果の高い教育技術です。
【解説】平成30年9月1日記
今回紹介する通信では、子どもの学習状況を的確に押さえるためのごく初歩的な教育技術を紹介しています。初歩的な教育技術なのですが、極めて効果のある教育技術です。これを知って、他の場面でも使えるようになると安定した授業ができるようになります。子どもにも力が付いてくることを実感できます。
※初出 平成9年 教務通信
子供に力をつけるとは その2
■前号で私は、子供に力をつけるためには、「評価」すなわち「点検」が必要であるということを書いた。 それでは、その「点検」を誰がしたらよいのだろうか。
もちろん子ども自身が「自己点検」できれば申し分ない。
しかし、なかなかそうはならない。
やはり教室にあっては、担任である教師が点検をする必要が出てくる。
例えば、次のようにである。
「全員、起立。この問題の答がわかった人は、すわりなさい」
こうすると、問題がわからない子だけが立っていることになる。
教師にも子どもたちにも、問題が解けない子は誰なのかということが一目でわかる。
このようにすると、次の手が打ちやすくなる。
もしかりに、
「この問題が解けた人は、手を挙げてください」
と、教師が言ったらどうだろうか。
わかった子が手を挙げる。
わからない子が手を挙げない。
と、単純に言い切ることはできない。
わかった子でも手を挙げないことが往々にしてあるからである。
つまり、「わかる」「わからない」というのは、子どもの頭の中の問題である。
子どもの頭の中のことは、教師には見えない。
見えないから、見えるようにしなければ「点検」することはできないのである。
例えば、基本的な教育技術として次のようなことがある。
社会科。
地図帳で地名を探す勉強。
「札幌を地図帳で探してください」
と指示して、後は子どもの様子を見ているだけ。
これでは駄目である。
なぜなら、誰が探せて、誰が探せていないのかがわからないからである。 教師は、次のように言わなければいけない。
「札幌を地図帳で探してください。見つけた人は、指を置いてください」
このように言って、机間巡視をする。
そうすると、一目で誰が探せて、誰が探せれないでいるかがわかる。
国語の時間。
漢字の筆順。
黒板で教師が筆順を示す。
そして、ノートに2、3回練習させる。
これでは、まず子どもには力は付かない。
漢字のテストをやれば、90点以上の子も2、3人いるだろうが、50点以下の子が続出だろう。
漢字練習の一つのポイントは、「空書き」をさせることである。
空書きというのは、子どもたちに、空中に指を挙げさせて、一斉に声を出させて、書かせる方法である。 「山」という漢字であれば、「いち、にーい、さん」と言いながら、空中に指で書かせるのである。
こうすれば一目で誰が正しく書けて、誰が正しく書けていないのかがわかる。
これも「点検」である。
そして、もし正しく書けていない子を教師が発見したとしたらどうだろうか。
もちろん、正しくできるまでやり直しをさせることになる。
この「点検」から「やり直し」という指導の流れこそが、子供に力をつけていくための大事なポイントなのである。
■学校においても、「点検」する者は必要になる。
それが教務の役だと私は考えている。いわゆる「嫌われ役」である。
もちろん先生方が「自己点検」してくだされば何の問題もない。
しかし、どんな世界でもそうだが、人間である以上必ず落ち度が出てくる。だから、誰かがカバーする必要が生まれるのである。
それが学校においては、嫌われ役としての教務の役割である。
「口うるさい」と思われるぐらいが、ちょうどいいと思っている。
「嫌われ役」になることをここに宣言しておこうと思う。