【教頭通信】子どものつまずきに応じた教育②
【解説】令和2年5月11日
今なら、もっと効率的な方法があるかもしれない。ネット上にはパソコンを使って、楽しく学べるアプリが増えている。
これを書いていたのは、今から20年ほど前のことなのだから、当然と言えば当然である。
それでも今でも通用する大切なポイントは、子供のつまずきに応じた教育の大切さと大人の誰かがそばにいてチェックしてあげるということである。
チェックするのでも、やはり叱るということではなく、認め・励まし・ほめるという指導する側のスタイルが問われることになる。
※初出 平成13年 教頭通信
■漢字と計算,どちらが指導しやすいか。もしくは、どちらが子どもに力をつけやすいか。
大方の人は,計算の方が指導しづらく,子どもに力を付けづらいと考える。
しかし、私は漢字指導の方が大変だと考えている。
漢字指導の最終目標は,文や文章の中で適切な漢字を使うことができるというものである。
漢字練習をしたり,漢字テストをしたりすると、そのときには書ける。
ところが日記や作文を書かせると、習った漢字も使えない、というようなことを先生方は経験しているはずである。
つまり、漢字がその子に「血肉化」していないのである。
■計算指導において教師は,子どもが間違えていると、どこで間違えているのか,つまずいているのかということを考える。
そして、その間違いやつまずきに基づいて、授業を組み立てたり,宿題を与えたりする。
つまり、計算指導では,「つまずき」が見えやすく,対策が立てやすいのである。
■ところが、漢字指導ではどうか。
計算指導とは反対に,つまずきが見えにくい。
何故,間違えたのか,何故つまずいているのかが、教師には見えない。
もしくは「ただ単に練習不足だ。努力不足だ」という考えに短絡的にいってしまう。
その「練習不足」「努力不足」という考えから脱しない限り、子供に漢字力を付けることはできない。
■漢字指導におけるポイントは,計算指導と同じで,子どものつまずきに対応するということである。
子どものつまずきに対応するとはどういうことか。
まず、考えることは,漢字が苦手な子に共通していることとは何か、ということである。
漢字が苦手な子の多くは,筆順がバラバラである。
正しい筆順を身につけること。
これがどうしても大切になる。
だから、子どもに筆順を覚えさせない指導では、全くといっていいほど子どもの力は伸びないのである。
ただし、学年が上に上がって漢字の筆順のルールをそれなりに身につけていたり,学習方法を身に付けている子達なら,教師が手取り足取り教えなくても大丈夫だろう。
■新しい漢字を学習する。
まず教師がやるべきことは,筆順をくどいくらい練習させることである。
この場合,必ず誰かがチェックしなくてはならない。
教師が黒板に新しい漢字を書く。
その場合,教師が書き順を声に出しながら書いて見せる。
次に、子どもの手を挙げさせ,空に書かせる。
その場合、一斉に書き順を唱えさせ,書かせる。(これを空書きという)
教師は,子どもたちの手の動き,口の動き,目の動きを見て,確実に空書きができるようになっているかを確認する。(しっかり覚えれない子は,目がキョロキョロしている)
この空書きが終わったら,机の上で指書きを行う。
鉛筆は持たせない。鉛筆を持たせて書かせると,鉛筆の方に意識が行くために書き順が疎かになる。
指書きの場合も、書き順を声に出させ,ていねいにさせる。
そして、なぞり書きである。
お手本となる漢字の上を鉛筆でなぞって書かせるのである。
そのときも書き順は、必ず声に出させる。
ともかく、書き順が「漢字指導の命」だと考え,それを子どもに意識化させるのである。
そして、3回ほどノートに書かせる。
■ようするに「空書きー指書きーなぞり書き」という流れを踏むのである。
この中でのポイントは、正しい書き順を意識させ,覚えさせるために声に出させる、ということなのである。
この流れを省略しては、なかなか子どもには力がつかない。
だから、教師と一緒に声に出したり,教師が点検・確認するということをするのである。
■漢字の学習方法として,書き順を意識し覚えるということが習慣化している子には,教師が付かなくても大丈夫。つまり高学年では子どもに自学自習させるということが出てきてもおかしくはないのである。
ちなみに、高校入試や大学入試には,必ずといっていいほど「書き順の問題」が出されているのは、皆さんもご存知のことだろう。あれは、漢字の学習法が身についているのか,といったことも試されているのである。
■このようにして、漢字の書きにおける子どものつまずきを克服させる。
そして、漢字テストでは,機械的に問題を出していくのではなく,ちょっとした工夫(子どものつまずきに対応した工夫)をするだけで、子どもはあっという間に力を付けていく。