【校長通信】やる気を引き出し努力に向かわせる
【解説】令和6年4月9日記
学級を担任していたころ、子供たちの可能性を伸ばすためにはどうしたらいいのだろうか、ということをよく考えていました。
さまざまな方法・考え方はあるにしろ、それらに共通したものをできるだけシンプルに表現したい。
結果、2つの原則にまとめてみました。
それがこの号で紹介している「個を伸ばす2原則」です。
集団を育てる原則とは違うということを私なりに区別した結果としての2原則です。
※初出 平成22年9月15日
◆一人ひとりの子どもの可能性を引き出すこと、それが教師の大切な仕事であり、責務である。一人ひとりの子どもの可能性を引き出すというのは、口で言うのは簡単だが、実際にどうしたらいいのかはなかなか難しいことだ。子どもの可能性の一つである「学力を伸ばす」ということに関しても、簡単なことではない。実態も把握しました、計画も立てました、きめ細かく指導しました、家庭学習としての宿題も出しました、としてもそれほど簡単に学力が伸びるわけではない。正確に言えば、そのように取り組んだとしても伸びる子もいればまったく伸びない子もいるということだ。
◆昔、学級づくりの研究実践に取り組んでいた時、一人ひとりの子どもの可能性を引き出すために必要なことを二つにまとめたことがあった。「個を伸ばす2原則」である。
「個を伸ばす2原則」
第1原則 やる気尊重 第2原則 努力重視 |
◆一言で言えば、「やる気を引き出し、努力に向かわせる」ということだ。やる気のない子どもに対して、一生懸命やれと叱咤激励しても効果は上がらない。教師がまずすべきことは、子どものやる気・意欲を引き出すことだ。私の娘の成績が芳しくない。娘は、すっかり自信を無くして何かあると「もう家に帰りたい」と言うようになった。私も父親として励ましたり、母親も娘の愚痴を聞いたり悩みを聞いたりしてあげたが、なかなか思うようにはならなかった。
◆先日、娘の学校で期末試験があった。いつものようにパッとしないのかな予想していたが、数学のテストだけは何故か良かった。娘に直接会ってその話になったら、「いくら勉強しても、私はもう駄目かなと思っていたら、今回は数学よかったので、やる気が出てきたよ」と明るい顔で言う。「数学の点数が良かった理由は?」と聞くと、娘は「何かな?」と考えて次のように言った。「テスト前に、ノートを見返して忘れていることを思い出そうとしたからかな」と言う。「そんなこと、パパが前から言ってきたことでしょ」と言っても「そうだっけ」といった感じである。ともかく、娘は点数が取れたことを喜び、次に向けてやる気が出てきたのだ。それだけで、顔つきが良くなる。声のトーンが明るくなる。物事に前向きになる。何とも単純な性格の娘だなと父親としては思う。やる気を引き出せば、子どもは間違いなく変わる。そのために教師は、あらゆる手段を講じてやる気を引き出すことに全力をあげることだ。
◆それじゃ、やる気さえ引き出せば何とかなるのか。やる気は、失敗や躓きがあると、すぐにしぼんでしまう。風船をイメージしてもらえればわかりやすい。風船に空気というやる気が満ちれば、パンパンに膨らむ。しかし、何もしなければ、空気は抜けしぼんでいく。風船がしぼんでしまわないようにしなければならないのだ。本当は、子ども自身が風船の空気が抜けないようにすることが望ましい。しかし、それはほとんど無理なことだ。誰かが空気を入れてやらなければならないのだ。その空気とは、「努力」という空気だ。学校においては、子どもが努力できるように、努力し続けることができるように、教師が指導していくことが求められるのである。娘のことで言えば、やる気は出たのだから、今度は努力できるのか、努力を続けることができるのか、ということだ。それがないと一回だけ数学のテストが良かっただけということに終わってしまうのである。