【教頭通信】全国一斉学力テスト 国語編

【解説】令和2年7月8日記

今回紹介するのは、現在の全国学力学習状況調査が開始される前のものである。

当時、全国的に学力低下ということが問題になっていた。

そこで、抽出での学力テストが実施されたのである。

ここでの私の考えは、はずれていたのだが、学力というものについてどう考えていったらいいのかは少しは参考になるのではないかと考え「没」にすることはやめた。

※初出 平成12年 教頭通信

■2月21日前後に全国一斉学力検査が行われた。全国42万人の児童生徒に実施されたという。かつてないほどの大規模なものである。何故、文部科学省は行う必要があったのか。それは「学力低下」の問題に答えるためである。

 

■何を具体的に調査するのか。学力低下になっているのは本当なのか、違うのか。それを調べるためには学習指導要領の内容、すなわち文部科学省の言うところの「基礎・基本」が身についているのかを調べるのである。

 

■私たち現場の人間にとって、大切なのは要するに「どんな問題が出されたのか」ということである。ところが本校では行われなかったので、どんな問題が出されたかということについてはわからない。また、実施した学校においても問題内容を複製したり、複写することは禁止されている。児童の解答用紙も担任が採点するのではなく、厳封して送り返すことになっている。厳密な調査である。

 

■しかし問題を推測することはできる。

「学力低下」を調べるということは、比べなければわからない。

何と比べるのか。他の国とか。そんなことはない。以前の小学生と現在の小学生の学力を比べるのである。

そのとき、問題が違ってもよいのか。問題が違っていたら比べようがない。だとしたら以前やったことのある問題が中心になるはずである。

その結果と今回の結果を比べてみて、初めて「学力が低下しているのか、していないのか」がわかる。

 

■平成5年に文部省は、小学五年、六年生3万2千人を対象に調査している。

そして、その問題の3分の一だけが公開されているのである。

 

■国語の問題文を紹介しよう。これは『現代教育科学』(明治図書)94年9月号に掲載されていたものである。

ただし、教材文は省略して「問い」だけを紹介することにする。

 

■第五学年 理解 文学的な文章

問①「この文章の終わりで、源助じいが「う、うむ」とうなる場面がありますが、源助じいは、どのような気持ちだったのでしょうか。源助じいの立場になって、文章中の言葉を使いながら、源助じいの気持ちをわかりやすく書きましょう」

問②「この文章を読んで、あなたは、どのような感想を持ちましたか。あなたが手がかりにした文章中の言葉も使いながら、あなたの感想をまとめて書きましょう」

 

■第六学年 理解 説明的な文章

問③「事実を述べている文と筆者の考えが含まれている文に分けなさい」

・・キーワードを指摘し、適切に答えるようにする設問・・・

 

■問①でのポイントは、「登場人物の立場になって」という視点を踏まえて聞いていることである。また、自分の感想を述べるにしても「文章中の言葉を使いながら」というキーワードの使用を求めていることである。

 

■さて、問①でも問②でも公立小学校のどのくらいの児童が答えることができるであろうか。文部科学省は、学習指導要領は最低基準だと主張している。ということは、テスト問題は最低基準のものが中心にならなければならない。最低基準だとするなら、少なくても八割の子どもたちができなければならない。問①や問②、八割以上の子どもたちができると思うだろうか。私からしたら、ほとんど無理である。

 

■文中のキーワードを指摘する。その上で自分の考えを持つ。しかもそれだけでなく自分の考えを文章として表現できる。この三つの能力を要求している。キーワードを指摘するというのは、国語の基礎・基本である。当然その程度のことは授業で扱っていなければならない。しかもキーワードを指摘することは、一度や二度の授業で定着するものではない。繰り返し指導することが必要である。

 

■また「問」そのものの文章も正確にとらえていないと、正答を導き出すことはできなくなっている。「問」をきちんと読むという基礎学力もなければ太刀打ちできないのである。

 

■全国一斉学力検査からいえることは、要するに次のことである。

「基礎・基本がなければ答えることはできない」

なおかつ

「基礎・基本だけでは答えることはできない」

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