【学校便り】夏休み、有意義な体験を
【解説】令和5年3月17日記
子供時代における体験の重要性を何度言っても言いすぎることはありません。
この学校便りでは、夏休み中に体験することの大切さについて語っています。
中学生期であれば、仲間との体験です。
コロナで、今の子供たちは「見えないマイナス」を背負いました。
是非、体験できる環境を整えてあげてほしいなと思います。
※初出 平成29年7月21日
◆夏休み。朝6時過ぎに起きる。近所の友達と家の近くの空き地で開催されるラジオ体操会に参加。近所の友達と言っても同じ学年の友達はほとんどいない。年上や年下が混ざり合った縦割りの友達関係。いつもより早く起きるために眠気まなこでラジオ体操の歌を歌い、ピアノの伴奏に合わせてラジオ体操をする。ラジオ体操会の最後には、その地域の一番上のお兄さんやお姉さんがハンコを押してくれる。ラジオ体操参加の証として押されるハンコ。それが欲しくて毎日のように参加。しかし、夏休みも後半の頃になると、なかなか起きられない。そのために皆勤賞をもらえないこともあった。
◆ラジオ体操が終了し家に帰ると、家の外からいつものように「イガー、イガー」とリヤカーを引いたイカ売りの声。なぜか、いつもこの時間帯だった。その声を聞くと、母親は鍋を持ってイカを買いに行く。母は、買ってきたばかりの新鮮なイカをおろして刺身にする。朝の食卓には、湯気の上がった炊き立てのご飯。味噌汁。タクアン。そしてどんぶりに入ったイカ刺し。すりおろしたばかりのショウガ。それを醤油と混ぜる。そして、イカ刺しにかけて、熱々のご飯の上にのせる。ご飯をかきこむようにして食べる。おいしかったなー。
◆子供時代のわずか朝1時間程度の夏休みの記憶ですが、強烈に私の記憶に残っています。目を通して見えていた夏の風景。朝と言えども夏の強い日差しでできる空気の揺らぎ。耳を通して聞こえてくるラジオ体操の音楽。友達の声。夜の静けさから徐々に町の喧騒に満ちていく町中の音。樹々に止まって鳴いている鳥のさえずり。自分の肌を通して伝わってくる夏の空気感。朝食べるイカ刺しの味覚、出来立てのご飯の匂い等々。自分の五感を通して様々な体験が混然一体となって、自分の意識の奥底に刻み込まれ生きる力のもとになっている気がします。
◆今から思えば、そうした日常の何気ないことでも貴重な体験であり、最大の学びでした。それこそ体験、疑似体験や間接体験ではなく直接体験こそが、私たちの考える力の源であり、豊かな心を醸成していく源だと思えるのです。
◆しかし、中学生になると子供会活動のラジオ体操にも次第に参加しなくなり、家族とともに朝食をともにしなくなってきます。あの小学校までの貴重な体験。中学ではなくなってしまうのでしょうか。そんなことはありませんね。体験の内容・質が変わっていくのです。
◆私の場合であれば夏の暑い盛りに体育館の蒸し風呂のような中でバレーボールを追いかけていた部活動。家の外で日が暮れるまで時間も忘れ友達とたわいのないことで話し込んだ夏の夕暮れ時。友達と自転車で遠出をしてプチ冒険したこと。どれもこれも、今思い起こせば、友達とともに時間を共有し、友達とともに体験を共有していました。それは親から離れていく自立への一歩だったのかもしれません。
◆体験は人間の発達・成長にとって極めて重要です。体験は、その年代、その年代で質も中身も違ってきます。中学生であれば「体育祭や文化祭の実行委員」「部活動や委員会活動」「部活動で活躍することや部長や役員をすること」などの体験をすることが「意欲」「コミュニケーション力」「へこたれない力」「自己肯定感」を養うのだと言われています。
◆明日から24日間の夏休みに入ります。夏休み中でしかできない体験を多くしてほしいと思います。暑い中で取り組む部活動も貴重な体験です。家の中に閉じこもっているのではなく、是非、その子なりの、その家庭なりの体験をしてほしいです。事件・事故に巻き込まれることなく、有意義な夏休みを送ってください。