【教頭通信】理想の教師像

【解説】平成30年8月13日記

教師の一番の仕事とは、やはり授業です。授業というのは奥深いものです。授業を通して子どもを変えるということを自覚することがとても大切です。それも一人の子だけでなく、全ての子どもを変える、ということです。

もちろん、1時間の中で全ての子どもを変えることはなかなか困難なことです。しかし、その1時間の中で全ての子どもたちを変えるという気概を教師は持つことです。「1時間の中で全ての子どもを変える」という気概を持つことが教師としての力量を高める第一歩となります。

そうした気概を持った教師のことを、不思議なもので子どもたちは信用します。尊敬します。理想の教師とは、自分の仕事を突き詰めていく中で「自分の心の中」に生まれ、そして子供に伝わり、周りの大人にも伝わっていくのです。

※初出 平成15年 教頭通信

■「理想の教師像」とはどのようなものでしょうか。理想の教師像を考えるにあたっては、大人の側だけの視点で論じられることが多いのですが、実際に教育を受けている子どもの側からの視点も大事になります。

■「理想の教師像なんて関係ない。自分は自分なりの方法でやるだけだ」という方もおいででしょう。しかし、理想の教師像とは一体いかなるものなのかということをも少しでも理解しておかなければ、自己満足、自己中心的な実践へと陥ることになります。努力の方向を見誤ることになります。

■最近、読売新聞社が興味ある調査をしました。全国の親子180組に対してアンケートをとりました。いくつかのアンケートの項目があるのですが、「教師にとって重要なもの」つまり「理想の教師像」を聞きました。

■アンケートの結果、ちょっと意外なことが浮かび上がってきました。親、つまり保護者は「教師にとって重要なもの」の第一位にあげたのが、「教育への熱意、やる気」でした。75%もの親が重要だと考えているのです。このことは、昔から言われてきていたことなので、さして意外ではありません。「金八先生」「熱中時代」等のテレビドラマ、新聞報道、教育関係の書籍などでは、繰り返し大人たちが言ってきたことでした。「教師は、教育愛が必要である」「教師は、普通のサラリーマンと違うのだから、倫理観・道徳観が高くなければならない」等さまざまでした。

■ところが、親の考えに反して、実際に教師から教育を受けている子供達は「教育への熱意、やる気」を一番重要なことだとは考えていないのです。子供たちが考えている第一位は「授業の分かりやすさ」でした。それもなんと80%もの子供たちが望んでいるのでした。ちなみに「教育への熱意、やる気」は子供達にとって第六位の36%でした。

■私たちの仕事にとって、一番大切なことは「子ども」です。子どもがいなければ教師という職業は成り立ちません。その子供たちが一番望んでいることが「授業の分かりやすさ」だとしたら、そのことを後回しにして、いくら「教師には熱意が大切だ。やる気が一番だ」と力説したところで無意味です。もちろん、教師には熱意ややる気は必要ないということを言っているのではありません。熱意ややる気は、結果として相手に伝わっていくものだと言いたいのです。

■私たち教師が一番に努力すべき方向は、授業を分かりやすいものにしていくということです。それも特定の子達だけでなく、全ての子供達にとって分かりやすい授業を保障してあげることです。全ての子供達に分かりやすい授業を保障するというのは、困難な道です。2、3年教師の生活を過ごしたら、できるようになるなんてことは絶対にありえません。自覚した努力の日々が必要なのです。そして、その結果として周りの同僚にも親にも、その教師の教育にかける熱意ややる気が伝わっていくものなのです。

■この「授業の分かりやすさ」ということを抜きにした、教育への熱意・やる気というのを一人一人の教師に押し付けていくことは、進むべき道を見誤らせてしまいます。なぜなら、教育への熱意・やる気が他人に伝わっていくとは、具体的には「自己犠牲をしいる」ということなのです。

■自分の生活時間を削り、子どものためだったら、なんでもする。子どものためと称し夜遅くまで学校に残る。日曜、土曜は子どもを連れてハイキング、夜は保護者とスポーツ交流、終われば飲み会。こうした教師は、周りの親からのうけもいいです。しかし、授業内容は子どもにとって分かりづらい、できない子をバカにし、ほったらかし、相手にするのはできる子だけ、指導方法は子どもを怒鳴り、時には「アメ」を与えているのだとしたら、どこか異様です。本筋を忘れた努力だからです。

■授業の分かりやすさを求め努力し、保護者には教育の熱意ややる気が自然と伝わっていくようにする。これが読売の調査から浮かび上がってきたことでした。

 

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