【サークル通信】教え方の基本を身に付ける

学生時代、取り組んでいたこと

大学時代、キャンプ活動のリーダーをしていた。リーダーの中には、渡辺、雨宮、小松といった大学時代の友人がいた。

千葉県のスーパーマーケット主催で子供たちを集め、三泊四日程度で長野県の聖高原にチャーターバスで行き、キャンプをするのである。倒産したホテルを貸し切り、地元の町の協力を得て、キャンプをする。

一回のキャンプで100名程度、それを夏の間、5回も6回もするのである。毎回、違う子が参加してくる。一夏で500名もの千葉県の子供たちが参加してくる大きなイベントとなっていた。

100名の子供たちを10名程度、10のグループに分ける。一つ一つのグループに学生リーダーが付く。10名の学生リーダーを束ねるチーフリーダーが付く。一つのキャンプで12名ほどの学生リーダーが、一グループとなる。

現地、聖高原には現地スタッフがいる。5名ほどである。学生である。そして、すべてを統括する企業側から一人参加している。この人が、キャンプのあり方からレクリエーションの仕方まで、さまざまなことを教えてくれる方である。

子ども一人一人に満足してもらうために

民間の企業が行うイベントである。私たちは、そのイベントの立ち上げから参加した。企画・運営に携わりながら、子供たちがいかにキャンプを思い出深いものにしてもらうかを考えていた。

さまざまな子供たちが参加してくる。それもお金を払って参加してくる。そのためにも、キャンプに満足し、次の年にまた参加したいと思わせるようなものにする必要があった。それも特定の子だけでなく、全員の子、一人残らず満足してもらうことこそ重要だと思っていた。

計画の段階から、妥協することは許されなかった。分単位で計画を立てる。例えば、キャンプファイアー。入場の仕方から、点火、ゲーム、ちょっとした儀式、そして退場まで分刻みで計画を立てていた。また、雨が降ったとき、どうするのか(私たちは「裏プロ」と呼んでいた)。日の目を見ないことまで考えて計画を考えていた。また、キャンプの流れは毎回大体同じだが、具体的な細部はそれぞれのリーダーたちが考えることなので、微妙なところは違っていた。

キャンプのメインイベントであるキャンプファイアーは、四つから五つのゲームで構成する。火を真ん中にして子供たちを円陣にさせるが、この子供たちを集中させ、そしてゲームに乗せ、盛り上げさせていくのはけっこう大変であった。そこで、一人でゲームすべての進行を担当するのではなく、一人の学生が一つのゲームを担当するということをした。

学生リーダーは、自分の得意なゲームを持っていた。自分が得意だということは、子どもをひきつけ、盛り上げ、子どもの心に残るようにするということである。私は、リーダーと二年目には現地スタッフをやっていた。キャンプファイアーでは「落ちた、落ちた」のゲーム。肝試しでは、怪談話を子供たちに語る役をやっていた。マイクなしである。

そのどちらでも、場に応じて声の出し方に気をつけることだった。大きな声、小さな声、優しい声、怖い声、ゆっくり、ある時には速く、変化をつけながら話をすること。そうしなければ、子供たちを集中させ、ひきつけ、盛り上げていくことはできなかったからである。

声の出し方の基本を身につける

サークルで模擬授業をみる。真っ先に私が気になるのは、声の出し方である。教師という職業は、声を子どもの心に届けなければならない職業であるから、声の出し方というのはやはり基本である。もちろんただ大きな声を出していればいいというのではない。その場、その時の声の届ける子どもの状況に応じて使い分ける必要がある。

学生時代に声を出すことをしてきた教師は、大体うまい。合唱部や演劇部。体育会系で声を出すことを強いられてきた人。それらの人は、やはりうまい。

反面、残念ながら声を出すことの下手な教師もいる。この声が適切に出ているのかということは、本人には気が付かない。研究授業の反省会で指摘されることもない。周りの誰かが、指摘しなければいつまでたっても変わらない。

意図的に声を出すことを練習する。声を出すときの姿勢、目線、表情、声を出すとき体のどこに力を入れるのか、声を出しているとき子供たちの反応はどうなっているのか等、一つ一つチェックしていくことである。

こうした基本的な教え方の上に、授業の組み立てがあるのである。

※初出 平成16年 機関紙巻頭言

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