【月別の経営重点】7月「危機管理のプロ」
【解説】令和元年7月1日記
一学期が終了し、子供たちにとって待ちに待った夏休みが始まる。教師にとっても、ようやっとホッとできる時期となる。ところが、案外子供や教師の事故や事件に巻き込まれやすくなるのもこの時期である。危機管理が必要となる。夏休みに入る前に、ある程度しっかりと指導しておきたい。予め指導しておくことを私は「予防的危機管理」と呼んでいる。予防的危機管理をしておくことで、事件・事故に巻き込まれるリスクを減らすことができる。
※初出 平成29年7月19日
※前回、次のことを書きました。
◆道新でも一部記事になりましたが、国立青少年教育振興機構で興味深い調査がされました。それによると「体育祭や文化祭の実行委員」「部活動の部長や役員」「学校の運動系部活動で活動したこと」「委員会の委員」等の体験は、「へこたれない力」「意欲」「コミュニケーション力」「自己肯定感」等と深い関係があるという結果が出されました。また、親や先生、近所の人から「褒められた経験」が多かった人は、社会を生き抜く資質・能力が高いという結果が出ました。
◆本校の「三兎」「文武両道」、そして生徒指導部の自己実現を目指した「心のピラミッド」とつながるものがあります。夏季休業まで一か月。どうぞよろしくお願いします。 |
追記 「いじめ的言動」は決して許してはならない。「いじり」から「いじめ」に至ることもある。本人が嫌がったら、それはいじめ。ただし本人から「嫌」と言えないこともある。いじめられている側を徹底して守るという立場で、毅然とした対応が求められている。
危機管理のプロ「情報は血液である」
初代内閣安全保障室長であった佐々淳行氏は危機管理のプロである。あさま山荘事件の時、警察庁の陣頭指揮を執ったのは佐々淳行氏であった。その佐々淳行氏の本を昔読んだことがあった。その中で
情報は血液である。 |
という言葉が書かれてあったことを覚えている。(もしかしたら他の人の書かれた本だったかもしれないが)
「情報は血液である」ということはどういうことなのか。血液がなければ、体全体に栄養が行き渡らず、死に至る。社会におけるあらゆる組織体において、情報は人間における血液と同じくらいに重要であり、もしきちんと組織の隅々にまで情報が行き渡らないことがあれば、その組織は「死に体」と同じなのだということであるということだ。情報を受けた時、情報をすぐに伝えないことは判断を誤らせる。情報を伝えることを怠るのは、問題解決を遅らせるだけである。
組織体である学校においても同じである。悪い情報こそ、さっさとトップまで連絡せよと言われている。いい情報は後回しで良い。問題解決は時間が勝負である。情報を一人で抱え込むのは「犯罪と同じ」くらいの強い認識を持っておく必要がある。
夏季休業期間は危機管理が問われる
長期休業中も教職員は勤務であるが、課業日より自由に動けることとなる。年次休暇を消化したり、夏季休暇を利用して帰省することもあるだろう。少しでもリフレッシュできるように有意義な夏季休業にしていただきたいと思う。
その上で、長期休業期間というのは、生徒が大きな事件・事故に巻き込まれることもあるということを頭のどこかには置いておかなければならない。生徒間同士のトラブル、交通事故や犯罪に巻き込まれること、大きな地震や自然災害が起きることなど、何が起きるかわからないのが現代社会である。そのために生徒に何かがあれば、すぐに対応しなければならないこともあるだろう。即対応できるようにするために、いつでも連絡し、情報が全職員に行き渡るようにしておいてほしい。特に、生徒に関する情報が家庭や地域からもたらされた時、決して一人で抱え込まないでほしい。他の先生方に迷惑をかける、管理職に迷惑をかける、余計な心配をかけたら申し訳ない等、そのようなことを考えない方がよい。反対に問題を一人で抱え込み、泥沼にハマってしまうということもある。
一人の問題は学校全体に波及することがある
昔、ある教師は、学級通信に書いたことがあまりに生徒の個人的なことではないかと保護者から電話で指摘を受ける出来事があった。誰にも報告・相談せず一人で対応した。電話口で説明し、理解を得たとその教師は判断した。しかし、その親は納得していなかった。そこで校長に電話を掛けた。校長にとっては初耳である。「校長は、学級通信を読んでいるのか。それを配布することを認めたのか?」
残念ながら、その学校では、管理職から点検を受けることもなく、発行することが常であった。校長はその親からの指摘に答えることができなかった。そのために「学校という組織は一体どうなっているのか。民間では考えられないことだ!」と親の怒りを増す結果となってしまったのである。これは、昔小学校で見聞きした事例であるが、現在は学校で起きたことは、必ず学校全体としての組織の在り方が問われることが多くなっている。心しておかなければならない。
ネットによる性被害は社会問題化しつつある
被害にあった青少年の人権を守るためにまだ身近に感じていないが、日本全国でネットによる性被害が多発しているという。ネットによる性被害は決して他人事ではない。ネットの問題が頻発するのは夏休み期間である。(生徒だけでなく職員も)特に注意が必要である。例えば、次のような事例が公開されている。
・女子中学生は,SNSを通じて知り合った「19歳のイケメン大学生モデル」に裸の画像を送信させられた。この「イケメンモデル」は,46歳の男が他人の写真と偽名を使ってなりすましていたものであり,被害を受けた子供は全国で約130人に上った。【女子生徒の憧れ、恋心等を悪用し、詐欺的な犯罪行為である】
・女子高校生は,SNSを利用するなどして知り合った被疑者らに家出中に接触し,売春に関する契約書を書かされた上,マンションの一室に外から鍵を掛けられた状態で居住させられた。その上で,理由のない「罰金」を科されつつ,出会い系サイト等で被疑者らが募った客を相手に売春をさせられ,その代金も搾取された。【あまりにも悲しい事件である】 ・男子中学生は,SNS上で「女子中学生」と裸の写真を交換したが,この「女子中学生」は20歳の男がなりすましていたものであり,男に「警察や学校にばらす」などと脅迫されて呼び出され,わいせつな行為をされた。【女子生徒だけが被害にあっているわけではない。男子生徒も被害にあっている】 ・女子中学生は,女の子向けのスマートフォンゲームを通じて知り合った男とSNSにおいてやり取りする中で,裸の画像を送るように要求され,要求に応じなければ以前に男に送信した顔写真を悪用されるのではないかと思い,自己の裸をスマートフォンで撮影し送信させられた。【自分の意思とは関係なく脅されて性被害を受けている】 |
夏休み中や二学期になって生徒指導上の問題が噴出するとしたら、それは一学期末からその兆候はある。声、表情、服装、小さなルール破り、身の回りの乱れ等、その兆候を捉まえて、早目、早目に指導する。「生徒指導は事前指導による未然防止が最良である」何か問題が起きてから対応すると、後手になり余分なエネルギーを使うことになる。4月当初、生徒との出会いにおいて確認した中央中の生活規律・学習規律が維持されているのかを確認し、きちんと取り組んでいる生徒を認めてあげることが大切である。ともすれば守れていない生徒、守れていないことばかりに目が行きがちである。マイナス思考ではなくプラス思考で二学期につなげていきたい。