【PTA機関誌】「未来に生き抜く力を」

【解説】令和5年1月12日記

中学校における「勉強・部活動・学校行事」という3つのことは、とても大切です。

それらが充実し、各生徒たちもそれなりに満足する活動ができると、学校全体の雰囲気が変わります。

そして、なにより生徒たちの成長にもプラスになるという実感があります。

関根郁夫氏の「三兎を追う」というキーワードは中学校にとっては大切だと思います。

ただし、先生方の負担を減らすという観点がこれからは必要になるでしょう。

当時のスケート部というのは、地域の方々が指導してくださっていました。

その意味で言うと、「働き方改革」の先駆け的な意味があったのかもしれません。

※初出 平成29年3月

スケートの全道大会が釧路市柳町スケート場で開催され、中央中男子は総合優勝という快挙を成し遂げた。北海道新聞のインタビューに答えて、М主将は次のように意気込みを語っている。

「学校対抗は昨年春から優勝を目指して取り組んできた。チームとして全道で通用することが分かったので、次は全国でも優勝を目指したい」

スピードスケートは、もとより個人種目が中心となる。毎日、毎日、氷点下一〇度以下になる冬の厳しい寒さの中を練習して大会に臨む。自己ベストを目指しての己(おのれ)との闘いである。

そうした中にあって、М主将の語った言葉は中学生期における特徴を考えた時、実に価値あるものである。

 

中央中は、勉強だけでなく、体育祭や文化祭の学校行事、そして部活動という三つを大切にしている。中学生の成長にとって勉強はもちろんのこと、さまざまな体験をすることが生き抜く力を養うと信じているからである。

埼玉県立浦和高校は、埼玉県におけるいわゆる進学校であり、有名校である。毎年東京大学をはじめとする難関大学にほとんどの生徒が進学する。その一方で勉強だけでなく、多くの部活動の全国大会でも活躍する。そして、学校行事も非常に活発に行われている。

元校長の関根郁夫氏(現在埼玉県教育委員会教育長)は次のように言っている。

『二兎追う者は一兎をも得ず』と世間ではいいますが、本校では『少なくても三兎を追え』です。三兎とは、勉強、部活動、学校行事の三つです。

なぜ、三兎を追うのか。

それは、そのほうがワクワクして愉快だからです。受験勉強だけで大学に入った者は、社会で通用しないからです。

皆さんが競い合い関わり合う人は、勉強ができて当たり前の人々です。芸術やスポーツなどの文化資本を子供の頃から身に付けた人々です。幅広い教養や体験を積まなければ、競うことさえできません。役にも立ちません。

人のため世のために役立つことに価値があるのであって、大学に合格すること自体に価値あるわけではないのです。

中央中における体育祭や文化祭の学校行事で大切にしていることは、仲間とともに創り上げる体験である。仲間とともに喜び、仲間とともに悲しみを共有する体験。それが生き抜く力の土台となっていく。М主将の「学校対抗は昨年春から優勝を目指して取り組んできた」という言葉は、中央中の三年間の体験の中で培ってきたことを背景として表現されたのではないかと私は思っている。その意味でも中央中の特徴を表した中央中の生徒らしい言葉であった。

 

今の中学生が大人となり、社会の中で生きていく時代は、激動の時代になる。科学技術の進歩は加速度的となり、シンギュラリティと呼ばれる人工知能(AI)が人間の知能を追い越す時代が確実にやってくる。その年は今から二八年後の二〇四五年と予想する学者もいる。「そんなバカな」と思うこともあるが、例えば自動運転の車が、近年現実となっていることを踏まえると決して夢物語の話ではない。

そのような時代には、今の私たちが予想だにしない問題や課題が生じてくる。それら未知の問題や課題を克服していくことが、これからの人間には要求される。未来は突然やってくるのではない。今の連続線上にやってくる。今、学んだこと・学んでいることが未来に生かされていく。

その学びは教科における学びだけでなく、さまざまな活動の中で培われる人とのつながる力(絆)、人への思いやり、活動していく中で生じる問題を解決していく力、活動を成功に導くやり抜く力、努力をし続ける力など、数値では表せない資質・能力が求められるのである。

中央中で培った力・培っている力をもとに、全校生徒には是非将来「人のため世のために」活躍してほしいと心の底から願っている。

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