【自己研修通信】~教師の仕事とは~
【解説】平成30年10月7日記
若い頃から、自分の学びを深めていくために「自己研修通信」というのを発行してきました。サークルで発表したり、何かの原稿を書くときのネタとなるものです。一時、発行することを止めていたのですが、退職間際になってから「新・精進」(学び続ける)というタイトルでまた書くようになりました。「過去に発表した原稿」ではなく「今、学んでいること」として、こちらのカテゴリーで公開いたします。
※「新・精進」第19号 発行日 平成30年10月4日
◆教師の仕事は特殊である。大工や設計士のように、仕事をして「モノ」が残るわけではない。大工さんが「自分が建てた家はこれだ。息子に見せることができる」と時にそうした言い方をすることがある。教師はどうか。「この子が私の教えた子だ。」そんなことを言うこともない。教えた子が大人になって立派に成功したとしても、それがその教師の教えた結果だとは決して断定はできないものである。
◆将棋界にデビューした藤井聡太4段。将棋であれば、一勝負一勝負に全力をあげ、「勝つ」というこということを通して名前が残っていく。名勝負ともなれば「棋譜」が後世まで残る。画家であっても作曲家であっても、作品として残っていく。それなら教師はどうか。実践記録なら残ることがあるだろう。しかし、それは教師の実践のすべてではない。その時その時の一瞬のことが教育であり、残るものはないのである。それが教育のはかなさである。
◆創っては消え、創っては消えしていくもの。それが教育の本質である。それが教育の本質だとしたら、そのことの意味を十分に理解した者でなければ、本物の教育を創り上げることはできないのである。
◆1月18日、初代教え子から「2月か3月、日程調整しますので、先生から都合のつく日を聞きますのでよろしく」という連絡がきた。要するに退職記念のお祝いの会をしてくれるというのである。
※ここまで平成30年1月18日記
◆教育の本質とは創っては消えていくものである。
もしそうであるなら教育とはなんとむなしいものであろうか。
なんとはかないものであろうか。
教師にはそのむなしさや儚さに耐えられるだけの強さが求められる。
私は心の強さが欲しいと常に思ってきた。
自分の心の弱さを誰よりも知っているからである。
◆心の強さの根源とはどこにあるのだろうか。
それは孤独に耐える力である。
ただ一人でも生きていくという覚悟である。
たった一人でもサークルをやり続けるという覚悟である。
染谷くんの強さはただひとりでもサークルをやり続けていこうとする覚悟があるということである。
そして実際にやり続けている。
やはりその行動は尊敬に値する。
強さを感じられる人は、やはり孤独に耐え、自分の信じた道をやり続けている。
だからこそ本物の教師となれる。
◆教師は生きてきた証をどこに求めたらいいのだろうか。
教師のやりがいはどこにあるのだろうか。
教師がやりがいを感じることは、自己満足の世界かもしれない 。
教師本人にしかわからない世界かもしれない。
誰もいないお寺の前で瓦屋根職人が、屋根のある場所を見つめている。
そんな光景をテレビで見た
「屋根のあそこを作るために大変苦労したんです。誰にも分からないと思います。しかし私はアソコの部分こだわっていたんです。こうしてみるととってもよくできていると思います。ほとんど自己満足の世界ですがね 」
そう言って職人は満足そうな笑顔を見せた 。
◆教師も同じだ。
己一人が分かっていればそれでいい世界なのだ。
子どもや保護者から感謝されることを求めてはいけない
結果として感謝されることはある
嬉しいものだ。
そしてその時教師のやりがい、生きがいを感じるものだ。
しかしそれを求めてはいけない。禁欲するのだ。
感謝を求めればそこには嘘やごまかしが入ってくるのだ。
その一瞬一瞬において より良いものを作り上げていこうとすることこそが重要なのである。
◆退職してから半年が経った 。
決して働きたくなかったわけではない。
逆に働きたくて仕方がなかった。
樹木希林さんは次のように言っている
「年取ってくると体は衰えて行くけど、心のエネルギーは衰えないんだよね。そのギャップに苦しむんです」
体の衰えと心のエネルギーのキャップ、まさしく私はそれだった。
私の教師人生これで全てが終わった、やり残したことはひとつもない。
こんなことを断言して言うこともできなかった。
「まだ何かができる、いやできるはずだ」そんな心の叫びが聞こえてくるようだった。
◆退職してから私の頭をしめたふたつの問題意識がある。
一つは子供の発達にかかわることである。
それも、私のライフワークである子どもの発達を支援する学級経営の在り方とはいかなるものであるのか。
エビデンスのある研究や心理学的知見に基づいて、今一度問題提起をしてみたいということであった。
現在の教育の状況から子供達の発達をいかに支援するのかということを考えたとき、やはり心理学的なアプローチが極めて重要であるということ。
その大切さを思うのである。
◆問題意識の二つ目は、未来の学校・未来の教室を考えた時、ICTをいかに活用してより子供たちの成長を促しているのか、より良い未来の教育の在り方とは一体いかなることなのか、その観点から学校教育をサポートしてみたいということである 。