【雑感】「1センチのチャレンジ」
大人たちは、何事にもチャレンジすることを子供たちに奨励してきました。
特にこれからの新しい時代にあっては、ますますチャレンジすることは求められます。
今までしたことのないことにチャレンジしてみる。
誰もやったことにないことにチャレンジしてみる。
失敗をおそれず、試行錯誤しながらでもともかくやってみることに価値がある。
だけど、全ての子供たちというのは、大人が考えている理想のようにチャレンジするようになるのでしょうか。
チャレンジが大切だと大人が考え子供たちに奨励しているということは、現実はそうはなっていないということの現れです。
子供たちが何事にもチャレンジするようになるにはどうしたらいいでしょうか。
やはりそれには、子どもが小さい頃からチャレンジすることを応援してあげる大人側のサポートが必要です。
プログラミング教材を使って子供たちが自由に取り組む場面がありました。
子供たちにとっては、初めて取り組む活動です。
最初は、講師の方がプログラミングの組み方について説明し、そのあと実際に実機を動かしてみます。
子供たちは、講師の方が言ったように取り組みます。
そのうちに慣れてくると、自分なりの発想でプログラミングを組むようになっていきます。
講師の方が狙っていた方向で子供たちは取り組み始めるのです。
自分なりの発想で試行錯誤しながらプログラムを組み、実機を動かしてみる。
実機を動かしては、自分のイメージと違うと再びプログラムを組みなおす。
そんなことを何度も繰り返しながら達成感を味わっていきます。
ところがある女の子だけは違いました。
とてもおとなしい子です。
内気で、引率してきたお母さんの後ろの陰に隠れているような子です。
その女の子は、講師の方が言ったようにはプログラムを組むことができました。
しかし、それ以上にやろうとはしません。
講師の方が、女の子に「いいんだよ。失敗しても。いろんな動きにチャレンジしてごらん」と投げかけます。
女の子は、プログラムを組むタブレットを見つめながらしばらく考えています。
そして、意を決したようにプログラムを修正し始めました。
講師の方は、女の子がきっと違う動きを取り入れ「チャレンジ」しているなとうれしそうな表情で女の子のタブレットを見つめます。
ところがちょっとびっくりします。
なんと女の子が修正していたのは、「20センチ」の動きを「21センチ」、つまり1センチ付け足した動きにしていたのです。
他人から見たら「わずか1センチ」です。
しかし、その女の子にとっては「大きな1センチ」だったのです。
講師の方は、「いいね。いいね」と言ってほめます。
女の子は、うれしそうな表情でプログラムを組みなおし、実機を動かします。
実機は大きな変化をして動くことはありません。
しかし、女の子は満足そうな笑顔を見せていました。
チャレンジすることを養うには、きっとこうした「小さなチャレンジ」「1センチのチャレンジ」の積み重なりが絶対に大切なのではないかと思いました。