【読書】岡田尊司著『子どもが自立できる教育』(小学館)
この本は2013年に出版されています。
今から10年前ですから少し古い本になります。
しかしながら、内容は現在の教育の問題を的確に捉えており、現在でも参考にすべき提言がなされています。
岡田氏の主張は次のことです。
子どもの特性とニーズに合った教育である。子どもの能力は多様であるだけでなく、その発達の仕方も多様である。その子に備わった能力を、その子に合った方法で伸ばしてやれるかどうかが、スムーズに自立できるかどうかの鍵を握るのである。
同書 終わりにから
この主張は、一貫しています。
著名人などの事例、そして諸外国の教育などを数多く紹介しながら、子どもの自立に向けてどのような教育が必要なのかを論じています。
この本のキーワードの一つが統合能力です。
今の日本の画一的な教育では、子どもたちの統合能力を育てていないというわけです。
次のように指摘します。
統合能力とは弁証法の能力でもある。対立しているものを、対立を乗り越えて解決する道を見出していく能力なのだ。統合能力が高まると、葛藤や問題に遭遇しても、それを粘り強く克服する方策を見出せるようになる。逆に知的能力が高いにもかかわらず、些細なストレスで切れてしまったり、短絡的な行動に走ってしまったりするのは、統合能力が弱いからである。
そこで統合能力を育てるためには、「作文」「討論」「発表」の3つを学校教育の中に取り入れることを提言しています。
提言内容は、他にもあり、どれも的を射たものです。
そして最後に次のように書いてます。
一人一人の教師や親の努力では、どうにもならないほどのズレが生じてしまっている。どうにもならないことを、どうにもならないことを理由に続けているのだ。その犠牲になるのは子どもである。子ども一人一人のニーズに応え、その特性を伸ばしやすい仕組みが、ぜひとも必要なのである。
岡田氏は、今日本の教育に必要なのは改善ではなく改革だと、主張しています。
そのように、私は受け取りました。
今読んでも、決して色褪せてはいない本でした。