【連載47】ICT活用と知的好奇心 ~教育界が苦悩してきたのは学力問題~
ICTを活用した新しい教育になるからといって、今まで行ってきた教育を全否定することではありません。
今の教育、そしてこれからの教育も先人たちが築き上げてきた教育の上に成り立つものです。
もちろん、そこには教訓ともいうべきものが存在しますから、それをしっかりと把握し直すべきところは直し、新たな教育を創っていくということは言うまでもありません。
奈須正裕氏は次のように書いています。
かつての社会科では、授業と授業の間に、子供たちが自主的に家庭で考えをまとめてきたり、地域の人から聞き取り調査をしたりすることを暗黙の前提として授業を構想・実施していましたし、子供達もそのように学んでいました。
個別最適な学びと協働的な学びの往還を原理とした授業づくりは、けっして新しいものでも珍しいものでもありません。もちろん、大正期にそのことを喝破していた木下や奈良女付小はさすがだとは思いますが、私たちが感心し是非とも行ってみたいと願うような授業は、必ずと言っていいほど個別最適な学びをその構成要素として含み込んでいたのです。
奈須正裕著『個別最適な学びと協働的な学び』(東洋館出版社)
氏は「個別最適な学びと協働的な学びの往還を原理とした授業づくりは、けっして新しいものでも珍しいものでもありません」と指摘しています。
この指摘は、特に現在の定年退職前後の先生たちには納得できるものです。
若き頃、理想の授業として何とか自分もやってみたいと憧れてきた授業だからです。
もちろん、当時はICTなんてありません。
そして、形だけはマネできたとしても、多くの青年教師たちを含めて教育界が苦悩したのは「低学力」という問題でした。
それは一人一人を取りこぼすことなく、いかにして学力を保証するのかという問題でした。